旧家の怨念を描くのが得意なホラー作家
コンジャー家の森には忌まわしい伝説があった。昔そこで当主が幼い愛娘を惨殺し、自らも命を絶ったというのだ。それから半世紀以上が過ぎた時、再び不可解な事件が起きた。同家の次女セーラが父ジャックに連れられて森へ行った後、精神に異常をきたしたのだ。果たして呪われた森で二人に何が起きたのか? 奇禍はそれに留まらず、長女エリザベスと同じ学校に通う子供たちがやがて次々と姿を消しはじめた! ニューイングランドの田舎町に展開するサスペンス・ホラー
バルサムが、その田舎町にやってきたのは、旧友の司祭に招かれて教区の学校で心理学を教えるためだった。だが、やがて受持ちの少女が次々と剃刀や鏡の破片で手首を切ったり、首を吊ったりした。不可解なことはそれだけではなかった。彼は司祭の主催する聖ペテロの集いに誘われて行ったが、そこでの記憶が不確かなのだ。揺らめく蝋燭の炎。顔、顔……微笑む聖人の顔。幻想と恍惚。気がつくと思った以上に時間が過ぎていて、背中に赤いみみずばれが縦横にあった。テープに録音された集いのし悍くも淫らな光景。多くの人々を拷問と火あぶりで殺した13世紀の異端審問官、聖ペテロ。背景はほかにもあった。30年程前、少女がセックスしている両親を殺害し、自分も首をくくった。その一部始終を目撃していた幼児。少女たちの死は、精神操作による新しい魔女裁判か、それともただの自殺伝染なのか? 戦慄と狂気、怨念と恍惚が静かに絶頂へと高まっていくジョン・ソールの最高作。
風が吹くとき、水子たちが泣く。水子たちの聖所は炭坑の奥深くにあり、ここを侵す者には罰が下る。寂れた鉱山町アバートンには、そんな言い伝えがあった。五十年前のあの日も、風が吹いていた。やがて炭坑内を洪水が襲い、大勢の鉱夫が死んだ。以来、炭坑は閉鎖されたままだ。だが最近になって、再開のために鉱山技術者が雇われた。その彼が坑内で事故死を遂げ、あとに九歳の娘がひとり残されたとき、すべてが始まった。そう、また風が吹きはじめたのだ。風は水子の泣き声を運び、人々の心を狂わせ、惨劇を呼ぶ……鬼才が放つサイコスリラー!
町からつぎつぎと子供が消えてゆく。健康な乳児が理由もなく死ぬ“乳児突然死症候群”、小学生の謎の失踪、そして帰ってきた子供は何事もなかったように遊び戯れながら、フト異常を発揮して息をのませる。――静かな田舎町を襲う恐怖のなかで立ち上がった母親は疑惑の霧の向こうに、日常性を超えた巨大な悪の手を感じるのだ……
夫を失った身重のジャネットは息子のマイケルとともに亡夫の故郷に住むことになった。夫の妹もやはり妊娠していたが、なぜか出産を恐れ、20年前のある夜のことが忘れられない、とジャネットにうったえた。いったい、なにがあったのか。そして少年マイケルは疑いはじめた、父の死は本当に事故なのか……。つのりゆく疑惑と不安。モダンホラーの傑作。
ボストンから風光明媚な片田舎へ引っ越して来た12歳のミシェル。新しい生活を迎えた少女は、希望で胸をふくらませていた。だがそれも、事故で断崖から落下して、片足を不具にするまでの話。その時から、ミシェルは復讐の使徒と化した――百年前、子供たちにいじめられて死んだ盲目の少女の怨霊に取り憑かれたのだ……! スティーヴン・キングに次ぐモダンホラー界の大立者ジョン・ソールが、思春期にある少女の心に潜む暗い情念を繊細な筆致で描いたベストセラー。
アレックス・ロンズデールはシリコン・バレーのはずれにある町ラ・パロマで生まれ育った16歳のハイスクール二年生。黒い瞳とウェーブのかかった黒髪を持つなかなかのハンサム・ボーイで、子供の頃から人気者だった。ある晩、ハイスクールの同窓生が集うダンス・パーティに出かけた彼は、二次会ではめをはずして大騒ぎをしてしまう。ガールフレンドのリサの止めるのもきかず、酒を飲んだり、素っ裸でプールに飛び込んだりのはしゃぎ振り。その帰り道、アレックスは運転する車もろとも道路から谷底へ転落、重体に陥った。奇跡的に一命はとりとめたが、時がたつにしたがって彼は奇妙なイメージを見るようになった。そのイメージはサンフランシスコのある墓地に入った時、鮮明になった。彼は尼僧の姿を見、「復讐を」という声を聞いた。そしてついに自らが殺人を犯すことに……。
百年前に火事を起こし、放置されている靴工場の跡を改修して、巨大なショッピングセンターにする――工場の所有者にして、この町の名家スタージス家の当主フィリップにとって、その計画はすばらしいものに思えた。しかし、「あの廃墟に手を出すな」という先代の意向を無視して工事にとりかかった矢先、思いもよらぬ事故が続発する。マサチューセッツ州の田舎町、ウェストオーヴァ。この町の靴工場の廃墟には、なにかがいる。そのことを「感じて」いる、あるいは「知って」いるのは、フィリップの母アビゲイルと、幼い少女ベスの二人だけだ。それは百年前に焼け死んだ少女の怨念なのか――?ホラーの魔術師ジョン・ソールがおくる悪夢の饗宴。
まだ寒さが残る春先、母を亡くした十五歳のキャシーは、カリフォルニアから大陸の反対側にあるさびれた港町フォールス・ハーバーに住む父親の元に移ってきた。初めて訪れたこの土地で、彼女はこれまで夢の中で見たことがある黒衣の女ミランダに出会う。しかし現実には彼女は海辺の沼地に住み、人々からは魔女よばわりされている変わり者の女だった。新しく転入した地元の高校でも問題を起こすキャシーをめぐって、怪しげな噂が広がっていく。相前後してミランダが謎の死をとげ、凶事が続発する。キャシーの正体はミランダを受け継ぐ魔女なのか―。怨念と因習に彩られた荒涼たる土地を舞台に、思春期の不安な心理を妖しく描いたジョン・ソールの会心作。
サウスカロライナの海辺、陸から延びた長い一本の道で本土と繋がれている島に建つ巨大な屋敷。そこには、代々デヴェルクス一族が住んでいた。いまこの屋敷に住んでいるのは足の怪我でバレリーナの夢を断たれ、少女たちにバレエを教えている老婦人、マーゲリータとその母ヘレナ。その家に二十年ぶりにマーゲリータの弟ケヴィンが家族を伴い帰ってきた。それと時を同じくして、さまざまな凶事が起こりはじめる――。「ホラーの正道を行く作家」ソールが放つ異常心理サスペンス!
サンフランシスコからコロラドのちいさな町シルヴァーデイルにやってきたタナー夫婦。彼らの目には、この美しい高原の町はこのうえもなく清潔ですばらしい場所、そして幼年期から発育不良に悩まされてきた彼らの息子マークの虚弱体質を改善するには絶好の土地であると映った。理想的な教育環境を整えたと称するシルヴァーデイル高校に入学したマークは本人も知らないあいだに恐るべき陰謀にまきこまれていく。日常生活に忍び寄る恐怖を描く名手ソールが贈る異色のホラー・サスペンス!
ニューメキシコのモルディーダ・キャニオン近く、インディアン居留地にはさまれた小さな町ポレゴ。経営不振の石油会社が唯一の基幹産業の、このさびれた町で、深夜、女子高生が郊外の崖で転落死した。自殺か他殺か? 彼女の死体を発見したポレゴ高校の生徒ジェドはその死に疑間を抱いた。つづいて石油会社の社主が交通事故死。だか、このささいな事件は町を覆う大異変の始まりでしかなかったのだ――。モダン・ホラーの雄ジョン・ソールが巧みな構成で描く異色サスベンス・スリラー。
小麦色の肌にまばゆいブロンドの魅力的なテリィ。引っ込み思案でいじめられっ子のメリッサ。原因不明の火災でテリィが両親を失った夏、二人は出会った――母親につらく当たられていた十三歳のメリッサは、その心の中にすむもう一人の人格ダーシィを親友にしていた。母に折檻を受ける時には、ダーシィが現れるのだ。そんなメリッサの家族の新しい一員として、異母姉のテリィが現れた時、悪夢は静かに幕を開けた――、二人の少女のあいだの恐るべきひと夏の出来事を描いた、ソール本領発揮の長編。
ピンクに染めた髪、パンクロック風の黒い服……外見とは裏腹に、16歳の少女ケリーは心の奥底に深い空洞を抱えていた。自殺未遂を起こした彼女を、養父母は自分達の故郷フロリダ州ヴィレジャンに連れていく。明るい日差しのもとで、彼女に早く立ち直ってもらいたいと願ってのことだった。だが、ケリーは沼地の奥深くで行われている謎めいた儀式に魅了され、引き込まれてしまう。その儀式が自らの心の空洞を埋めるものと信じ……。ダーク・ノヴェルの巨匠ソールが構想新たに描く、闇に憑かれた子供達。
頭が良すぎるばっかりにいつも孤独感を抱える10歳の天才少年ジョシュ。二度目の飛び級で彼は、またしても初日から年上のクラスメイトとトラブルを起こしてしまう。しかし弾みで自殺を図ったジョシュが運ばれた病院で、彼は特別な才能を持つ子ばかりを集めた学校バリントンを勧められた。そこならいじめられることもないだろうし、友達もできるかもしれない。そう考えて転校したジョシュに友違はすぐにできた。だが、彼はまだ知らなかった、子供たちの間に伝わる学園の恐ろしい秘密を…。ソールが贈る青春ホラーの傑作!
別居中の夫のことで親友オードリーに相談を持ちかけようとしたメアリーアン。だが彼女はその際、逆にオードリー夫婦の事故死の知らせを聞いた。オードリーはアイダホ州シュガーローフで牧場を経営する夫と息子のジョーイと三人で響らしており、彼女とは万一の時には相手の子供の面倒を見る杓束をしていた。オードリーの元に急いだメアリーアンは、夫妻がジョーイの後見人として、彼女に遺産を残していたことを知る。同特に彼女は、両親を亡くしたジョーイの不自然な態疲に何かしら不安を感じていた…。
ロサンゼルス郊外の田園地帯に、カレンは幼なじみの農業主と再婚するため二人の娘と共にやって来た。だが結婚式の当日、次女のモリーが蜜峰に刺され意識不明となってしまう。実は、それは昆虫学者カールが極秘に開発した新薬を蜜蜂試し、その結果生まれた蜜蜂が彼女を刺したのだ。モリーは奇跡的に回復したものの、それから間もなくして、子供たちが蜂に刺され異常反応を起こす事件が続発した…。狂気の昆虫学者に呼び覚まされるように、不思議な霊力がのどかな田園地帯を凄惨な世界へと変えてゆく!
全米を恐怖に陥れた連続猟奇殺人犯のクレイヴンが死刑を宣告されて二年が過ぎ、いよいよ死刑執行の日を迎えていた。彼の事件を追求してきた女性新聞記者アンも、処刑に立ち会うためコネチカットを訪問中だ。処刑の日の朝、クレイヴンに再会したアンは彼から不気味な予告を受ける。「自分が処刑された後、また全てが始まる」無罪を主張し続けてきたクレイヴンが呟いた最後の言葉をアンは黙って聞いていたが、丁度同じ頃シアトルではアンの夫グレンが心臓発作を起こし死の淵に瀕ししていた……著者渾身のサスペンス・ホラー。
痴呆のすすんだ祖母を引き取った日から、16歳の少年マットの生活は一変した。裕福な母の再婚相手も我が子同然にかわいがってくれ、幸せな日々だったのだが……。「おまえの死んだ姉が帰ってくる」と騒いでは母をいじめる祖母、実母の横暴にじっと耐える母。なにかがおかしい。屋敷には妖艶な香りが漂い、誰かの気配が――。そんなさなか、狩猟中にマットはなぜか気を失う。気がつくとそこには額の真ん中を撃ち抜かれた継父の死体が……。しかしそれはマットと一家を次々に襲う悲劇のほんの序章にすぎなかった。ホラーサスペンスの大御所が描く日常に潜む身も凍るような恐怖。
無実の罪で投獄直前、拉致された青年ジェフ。解放されたのは広大なニューヨーク地下扶構内だった。異常殺人犯とコンビを組まされたジェフに“ゲーム”の開始が告げられた――闇に閉ざされた迷路を駆ける彼らを完全武装の男たちが追う。冷酷な狩人たちの正体は? そしてジェフはこの絶望的な死地から脱出することができるのか?
突然、通り魔に夫を殺されてから、キャロラインは必死で12歳の娘ローリーと11歳の息子ライアンを育ててきた。でももう限界――ところが、偶然出会った知的でハンサムでお金持ちの紳士トニーと恋に落ち、結婚することに。一家はトニーの住む高級アパートメントに移ったが、そこロックウェル館は“セントラルパーク・ウエストの大妖館”として知られる不気味な建物だった! 毎晩、悪夢にうなされるライアン。みるみるやつれていくローリー。この建物にはいったいなにが巣くっているのか? 親切だがどこか風変わりな住人たちの正体は? ――名手ジョン・ソールが描く、恐怖と驚愕のホラー・サスペンス。
何者かに誘拐され、暗い地下室で目を覚ました少女リンジー。目の前に立つ男が、グロテスクに微笑みかける―いや、そうではない。真っ赤な唇は、外科医用マスクに描かれた偽物。男は、何本もの蝋燭を灯した別室へと導き、「お誕生日会」を強制する。恐怖で震えているというのに、男と揃いの赤い唇を描いたテープで口をふさがれるリンジー。犯人の目的とは!?ホラーの巨匠がつむぐ、この世で最も恐ろしく、最も完璧な悪夢。